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kei*milano

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隣人

我が家の隣はしばらくの間、空き家になっていた。
私の家があるアパルタメントはL字型で、
中庭に面して窓があるので、お隣の窓が見える。
数ヶ月に1度、空気の入れ替えのためか、
大家さんらしき人が週末にやってきて、
窓を開けたりすることはあったけど、普段は誰もいない。
それが先週末から、立て続けに
誰かしらが出入りしている模様。
借り手が見つかったのかもしれない。
新しい隣人はどんな人だろう???

前回の隣人は、強烈なインパクトを持っていた。
25歳前後のアルゼンチン男性で、
黒の長髪で、口髭もある、なかなかイイ男。
そして彼の職業は、タンゴダンサー。
どこまでも『ラテン』な男だったのである。
隣の部屋からはタンゴのレコードが時折聞こえ、
たまにレッスンもしているようだった。

夏、クーラーなどない生活のため、
蚊の恐怖に怯えながらも、窓は開けておくと、
隣の窓から彼が顔をだして、「Ciao!」と私に声をかける。
無視するわけにもいかなので、「Ciao」と返す。
当時、異国での生活を始めたばかりの私はドキドキである。

そこから世間話が始まり、
「ボク、日本にも3回くらい行ったことがあるよ。
タンゴダンスの先生として招かれて、
松本でレッスンしたんだ。そうだ、写真を見においでよ。」
と彼は私を部屋に誘おうとする。

…この男は、キケンだ。
ラテン気質なのか、なんなのか、
とにかく、ものすごく軽薄な男だったのだ。
その場はなんとか逃げ切ったのだが、
「お誘い」はその後数日間、続いた。
そうして、いつしか彼とは
時々、窓越しに雑談する間柄になっていた。

廊下でばったり会うたび、
彼はいつも違う女性を連れていたりして、
すれ違いざまに、私にウィンクをしてみせる。
軽薄男の共犯者みたいな、
ちょっと複雑な気分を味わったりもした。

そんな彼はある日、
まるで夜逃げをするように引っ越していった。
たまたまその日、
友達と食事をして夜遅くに家に帰ると、
荷物を運び出す彼の姿。

「引っ越すの?」
「うん」
「こんな時間に?」
「うん」

…アヤシイ。
でも、深い詮索も出来ないまま、
お別れのあいさつをして、彼は去って行った。

その後、部屋の内装工事が行われたけれど、
以後、その家は空き家のまま、2年ほど過ぎた。
私は部屋を覗かれる心配もないので、
窓を開け放ち、部屋着のだらしない格好のまま、
お気楽な生活を今日まで送っていたのである。

隣人がいるとなると、そうもいかなくなる。
新しい隣人の存在は、
楽しみのような、残念のような…。
by kei-milano | 2006-05-18 03:05 | プライベート
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